統計からみる肺がん
2023年8月時点で把握できる最新の統計によると、がん死亡数は2021年では、男は1位:肺、2位:大腸、3位:胃、女は大腸、肺、膵、男女計は、肺、大腸、胃となっています。また、2019年の統計を基にした生涯全がん罹患リスクは男:65.5%、女:51.2%であり、肺がんに関しては、それぞれ10%、5%です。
これらの数値からもわかるように、「がん」は現代の国民病であり、当院のような急性期医療機関が「common disease」として取り組むべき疾患です。世界中で「がん」研究に対し膨大な費用が注ぎ込まれ優秀な頭脳が動員され、毎年、毎月新しい発見が報告されています。以前は研究室レベルの知見が臨床の現場に反映されるのに10年20年の年月を要しましたが、新世紀に入り、数年、時には数ヶ月で降臨することも稀ではなくなりました。「がん」に関する研究は、まさに指数関数的に進んでいると実感しています。
肺がん診療について
当科(呼吸器外科)が担当する「肺がん」も例外ではなく、肺癌学会が作成している「肺癌診療ガイドライン」も年に数回のマイナーチェンジが行われています。ガイドラインに採用されるエビデンスは、従前は前向き試験の結果のみでしたが、それでは進化に追いつけないと判断され、現状では小規模の試験や後ろ向き研究、単施設の研究、時には症例報告の内容までが加味されて改訂作業を行っているようです。日本を代表する肺がんの臨床家たちも、大規模前向き試験は時間がかかりすぎて結果が出るころには時代遅れになってしまうとコメントしています。
当科の診療内容を示します。診療科名は呼吸器「外科」ですが、外科手術を治療の一手段として有している「呼吸器科医」を目指し、実践しています。そのために、呼吸器外科医・内科医が、呼吸器外科学会、呼吸器学会および呼吸器内視鏡学会の専門医を有し、診断から治療をシームレスに行い、最適な治療を最適なタイミングで施行できるよう努めています。治療内容は手術、化学療法、放射線療法(放射線医コンサルト)、インターベンション等と多岐にわたります。
開業医の先生方へ
前述のごとく日々進歩する研究成果を眼前の患者さんに余すところなく還元することが、我々実地臨床医の最大の役目と考え、日々研鑽しております。学会、研究会をはじめ、文献、ネットやMRからもたらされる情報等、あらゆるところにアンテナを張り知見のアップデートに努めています。
肺がんもしくはその疑いの症例に関し、御紹介・御相談いただければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。