2017/11/20
心臓の病気について
心臓の病気の場合、最初から心臓血管外科を訪れることはほとんどありません。まず、循環器内科へ来られてから必要がある場合に心臓血管外科に相談に来られます。心臓の病気は、主に【1】心臓の血管(冠動脈といいます)が狭くなったり詰まったりする狭心症・心筋梗塞と【2】心臓の弁の病気(心臓弁膜症)があります。
1.狭心症・心筋梗塞
心臓の血管が狭くなったり、詰まったりした場合、治療法が二つあります。一つは、よく風船治療といわれるカテーテルを用いた治療(循環器内科で行われます)、もう一つがバイパスといわれる手術(心臓血管外科で行います)です。いずれも、利点と欠点があり、各患者さんに最も良い治療方法を選ぶためには、循環器内科と心臓血管外科が一緒に考える必要があります。この点、当院では、来院された方の検査結果を、循環器内科と心臓血管外科が合同で検討し、最も良いと考えられる治療をお勧めすることになります。
最近は積極的に人工心肺非使用心拍動下冠動脈バイパス手術を施行しています。
2.心臓弁膜症
心臓の中に、血液を一定の方向にだけ流すための「弁」と呼ばれるものが4つあります。色々な原因でこの弁が痛んできた病気が心臓弁膜症と呼ばれます。軽い異常の場合は、お薬で治療することも可能ですが、弁の痛み具合がひどい場合は手術が必要です。手術は、痛んだ弁を取り替える(人工弁置換術)か、痛んだ弁を治す(弁形成術)のいずれかの方法で行います。また心房細動を合併した患者さんには、積極的にメイズ手術を同時施行しています。
心臓の手術について、よく訊かれる質問
心臓の手術は、怖いとよく言われます。「怖い」というのは、どの様な治療か判らないための感情です。そこで、心臓の手術に際し、よく訊かれる質問とその答えを示します。ただし、一般的な事になりますので、病気の内容やご本人の状態によっては、ここで述べることと異なる場合があります。
心臓の手術は、危なくないのですか?
過去20年間で、心臓外科の技術、使用する道具や器具はずいぶん進歩し、安全になってきました。現在では、術前の状態のよい方では危険性は低くなり、2000年の日本の統計では、16532人の方が予定の冠動脈バイパス手術を受けられ、死亡率は2.0%であり、10090人の方が弁膜症の手術を受けられ、死亡率は3.6%でした。私自身の過去4年間の経験では、冠動脈バイパス術の死亡率は0.9%、 弁膜症手術の死亡率は1.6%で、よっぽど予期しないことが起こらなければ大丈夫という危険性になっています。
しかし、この危険性は、予定の手術(治療を受けられる方が歩いて入院できる状態)の場合であり、いわゆる「生きるか死ぬか」という状態で行われる緊急手術では、死亡率が10~20%と高くなります。従って手術が危険ではなく、状態が悪化してから手術をすると危険性が高いと思って頂いた方がよいと思います。
手術の後は痛いのですか?
手術=痛いと考えられる方がほとんどです。しかし、心臓の手術は比較的痛みが少ない手術です。体の表面から心臓に到達するためには、皮膚・皮膚の下にある脂肪・胸骨といわれる骨を切る必要があります。皮膚と脂肪の痛みは1~2日でおさまり、骨の痛みは3~5日でおさまります。手術が終わって2~3日は注射の痛み止めを、それ以後は飲薬の痛み止めを使うと、痛くて仕様が無いということは、ほとんどありません。もちろん、咳をしたり、力を入れたりするとしばらくは痛みますが、通常2ヶ月程度で、不自由なくなります。
手術が終わって、どの位で動けるようになりますか?
多くの方が、心臓の手術後は何日間もベッドに横になっていないといけないと思われています。しかし、実際は、手術の翌日の朝から、ベッドを起こして座り、普通の食事を始めます。手術する前の状態や、各患者さんの意欲などで異なりますが、速い方では3日目位から、ゆっくりされる方でも5日目位には、ご自分で立ってトイレへ行くようになります。多くの場合、大体2週間ぐらい、ゆっくりされる方でも、3週間ぐらいで退院されます。
入院期間はどれくらいですか?
特に大きい問題がない方の場合、手術数日前に入院して頂きます。糖尿病など手術の前にしっかり治療しておく必要がある場合は、手術の1週間前に入院して頂きます。入院された日に、院内の説明・手術の説明・麻酔の説明などを行い、御自分がどの様な治療を受けるか理解していただきます。上に書いているように、手術が終わって2~3週間で退院される方が多いので、短い方で2週間前後、長い方で4週間前後になります。
手術の後、どれ位で仕事が出来ますか?
現在、お仕事をされている方にとっては、大事なことだと思います。まず、仕事に内容で大分異なり、事務的な仕事の場合、術後3~4週間でできます。重いものを持ったりする仕事の場合は、術後2ヶ月は待って頂く必要があります。一般的に、早く仕事を再開したいと思われる方は、入院日数も短いことが多いようです。基本的には、御自分が「しんどい」と感じなければ、制限はあまりありません。