「ために、ともに、あらたに」への想い
一般財団法人永頼会 松山市民病院
理事長 山本 祐司
2021(令和3)年、辛丑(かのとうし)の新年を迎えました。
地域住民の方々や関係する諸機関・施設等の皆様には、救急医療や診療科別・臓器別専門医療を通じて、日頃より永頼会(えいらいかい)松山市民病院との連携・交流をいただき大変感謝申し上げます。本年もどうかよろしくお願い申しあげます。
昨年は、当病院の昇任人事として4月に田中良憲副院長、浅野光孝事務長がそれぞれ新しく就任しました。私は6月末をもって院長を退任し、7月に柚木茂新院長に交代しました。理事長職には引き続き関わりながら、診療にも部分的に従事しております。
私は、2009(平成21)年7月に前宮田信煕理事長・院長より交代し11年にわたり院長職を務めました。その間、新S棟建て替え、ER・HCU設置、DPCや電子カルテ導入、駐車場整備、学生実習棟・中央乳児保育園・リエール保育園などの建築、またキャリアラダーによる職員育成、各種認定・専門資格取得、病院機能評価の受審更新、病院学会参加、奨学金や職員顕彰など、ハード・ソフト両面での永頼会の病院事業や保育事業に取り組みました。院長として多くの職員とともに過ごした時を振り返りつつ、改めて関わりましたすべての皆様に感謝申し上げます。
さて、昨年は、国民が一丸となってやるべき期待の「東京オリンピック」が「新型コロナウイルス」対応一色に変わってしまいました。年末に発表される流行語大賞「3密」がそれを如実に反映しておりました。コロナ禍の中で丑年の新年を迎えましたが、今の第3波がとにかく収束に向かうことを祈ってやみません。
昨年の政治経済では、米国の大統領選が大きな話題でしたが、激戦4州を制した民主党のバイデン氏が勝利しました。トランプ大統領時代の4年間、特に景気や失業率も悪化せず普通なら再選可能と見られていたところ、全世界を襲った新型コロナ禍の中での落選。高かった全体投票率の内容分析では、白人と高齢者はトランプ票が、マイノリティ、女性、若者らはバイデン票がそれぞれ多かったとのこと。「アメリカ・ファースト」を掲げながら多国間協調からの脱退、新型コロナ対策の遅れとそれに伴う急速な経済低迷、失業増加など、政治素人(しろうと)のトランプ氏に次期は任せられないという米国民の判断だったのでしょうか?米国内だけでなく、米中の覇権争いを含め、多様な社会の分断と対立の構図が21世紀の世界の背景にあるのを感じずにはいられません。
日本では、安倍総理退陣後9月に継承した菅政権は「国民のために働く内閣」を掲げ、コロナ感染拡大防止と経済対策の両立の難しさに苦闘する船出となりました。財政や実体経済の疲弊の回復には長期的展望が必要で、コロナショックの波は当分長く続くとみられます。今こそ日本国民の規律と秩序を守る民度の高さでもって、コロナ禍を乗り越えることができるよう願うばかりです。
当院では、昨年2月から交通外傷による重度意識障害者専門病床(NASVA)を開設し、数名の新規入院を受け入れ、看護・リハビリチームなどを中心に活動し一定の成果を得つつあります。また、ボランティアの受け入れは昨年さらにメンバーが充実し、ガイド・環境美化・傾聴・図書・イベントなど多岐にわたり活動の幅を広げました。コロナ小康時期には、ウッドデッキの中庭で「癒しのプログラム-オータム・コンサート」も無事開催され、好評を得ました。ボランティアと関係者の皆様には感謝申し上げます。さらに、患者の疾病治療と仕事の両立支援のために、ハローワーク松山との協定などもスタートしました。しかしコロナ禍が続く中、何事も中途半端になり色々な活動は停滞しています。一方、12月には入院病棟を1つ削減して稼働病床数を減らし、看護職員と診療科を再配置し、効率の良い医療従事者の働き方を整備しました。
今年は、柚木新院長が掲げる「地域に根ざした医療―新しい時代の病院へ―」のように、コロナ禍の中で「ニューノーマル」に備える新たな医療課題への取り組みが期待されます。
私自身は、これまでの当院のスローガンやキーワードとともによく使っていた語句を振り返ってみました。そうすると、「ために、ともに、あらたに」というフレーズが何度も浮かび上がってきました。誰かや何かの「ために」、地域社会や時代と「ともに」、ココロ「あらたに」、歩む、進む、取り組む―という想いであります。今年は丑年に因んで「十牛禅図」を尋ね、床の間の円相の掛け軸を前に「ために、ともに、あらたに」という想いを念じながら過ごしてみたいと思っております。
患者・家族の皆様、関係する諸機関・施設等の皆様に改めて、永頼会松山市民病院とのご交誼をよろしくお願いしまして、今年のご挨拶といたします。