医療の持続可能性と質向上に願いを
一般財団法人永頼会 松山市民病院
理事長 山本 祐司
コロナ禍3年ぶりの行動制限のない年末年始になりましたが、日本では第8波に小児から高齢者まで全世代に感染拡大し、再び感染者が増加しました。中予・松山医療圏の諸機関・施設等の皆様には、1年を通じて松山市民病院との連携・交流をいただき感謝申し上げます。
昨年の世界では、コロナ・オミクロン株蔓延と、2月の北京オリ・パラリンピックを挟んでロシアのウクライナ侵攻で始まり、コロナとウクライナが語呂合わせのように語られる毎日でした。ウクライナ戦争が長引く中での、物価高騰・インフレは全世界に瞬く間に拡散し、世界人口70億の食糧・エネルギー危機が懸念され、世界市民は「不安、不満、不平」の3つの「ふ」に襲われています。
また、温暖化に伴う気候変動に発した地球規模の自然災害や感染症パンデミックへの対応に、国連やWHOなど国際機関が全世界に向けての協力・協調を求め続けた1年でした。
一方で、いわゆる「民主主義と専制主義」の対立と新たなグローバルサウスなる勢力が加わった国連の構造改革、NATOによるウクライナ軍事支援と米・EU・日本などによるロシア経済制裁など、今後の動向が注視されます。
日本では、安倍元首相の銃撃死事件がショッキングでした。「地球儀を俯瞰する外交」に乗り出し、「自由で開かれたインド太平洋構想(FOIP)」に至る長期政権の外交は、多くの大統領らとの良好な関係も築き「日本のプレゼンスの向上」に貢献したことが評価されました。
また、英エリザベス女王の崩御を機に、かつて産業革命以後世界を主導した英国と受け継いだ米国による化石エネルギー主導の新自由主義経済が、世界の分断を生み出しつつその終焉を迎えようとしているのでしょうか。膨張した欲望の資本主義が収縮を迎え、低成長・脱成長の循環型社会への転換が余儀なくされる中で、どのような再分配が考えられるのでしょうか。その中で超高齢少子化をまさに経験している日本の果たすべき役割は何なのかが問われています。
さて医療界では、厚労省も「地域医療構想」はひとまず置いて、今度は一転して「かかりつけ医機能」が発揮される制度整備へ向けて、さらなる医療費適正化(抑制)策に乗り出しています。ポリファーマシーなどの高齢者医療費抑制に反対はしませんが、国民の自由に医療を受ける権利が保護され、医療の持続可能性や質向上にブレーキとならないように願うばかりであります。そのほか、子ども・子育て政策、働き方改革など国民・医療者・社会の安心・満足・納得を求めて前進できる年になるよう希望します。
松山市民病院では、「市民による市民のための」「地域に根差した」病院を掲げており、私自身は、2021年「ために、ともに、あらたに」、2022年「地域医療に灯り(あ・か・り)を―安全安心・感染環境・倫理理想―」という言葉を標語として過ごしました。
今年2023(令和5)年は、テキストマイニングという手法を参考に、医療の持続可能性と質向上を目指すための「か・き・く・け・こ」をキーワードと致しました。(か)価値・(き)協調・(く)工夫・(け)謙虚・(こ)行動—多様な価値観を認め協調しつつ、つねに工夫をこらし、謙虚な行動に結びつける—私自身も含め職員一同、地域医療を通じて社会の発展に尽くして参りたいと思います。
今年も松山市民病院とのご交誼宜しくお願い申し上げます。