2017/11/24
胆道がんについて
胆道は肝臓で作る消化酵素である胆汁が肝臓から十二指腸まで流れる通り道のことで、以下のように分類されています。
- 肝臓内の胆管:肝内胆管と言います。
- 肝臓の外の胆管:肝外胆管といい、総胆管や単に胆管と言ったりもします。この肝外胆管をさらに肝臓に近いところを肝門部胆管、十二指腸に近いほうを遠位胆管と2つに分けています。
- 胆嚢:胆嚢は肝外胆管に胆嚢管という細い管を介してつながっており、一時的に胆汁をためておく部位です。
胆道がんは、肝外胆管と胆嚢にできたがんの総称です。
1. 原因
はっきりとした原因は不明ですが、胆石や胆管の感染などによる慢性的な炎症などの刺激や胆汁の流れを阻害する(胆汁うっ滞)すること、あるいは膵管胆管合流異常症などの先天性疾患、肥満や高カロリー摂取が原因と言われています。
2.胆道がんの種類
(1)肝門部領域胆管がん
肝臓に流入する血管や胆管が集まる部位のことを肝門部と言い、この部位に発生する胆道がんが肝門部領域胆管がんです。
(2)遠位胆管がん
肝門部領域以外の肝外胆管のことで十二指腸に近い胆管を遠位胆管と言います。この部位に発生するがんが遠位胆管がんです。
(3)胆嚢がん
胆嚢に発生するがんのことです。
(4)十二指腸乳頭部がん
胆管が十二指腸につながっている部位を十二指腸乳頭部と言い、この部位に発生する胆道がんを十二指腸乳頭部がんと言います。
3.症状
早期には特に症状はありません。進行すれば、黄疸が出現することが最も多いです。黄疸は胆道にできたがんにより胆度が狭窄ないし閉塞してしまい、その結果、胆汁が十二指腸へ排泄されなくなるために発生します。黄疸に伴う症状として、皮膚のかゆみや尿の黄染、白い便などを認めることもあります。また腹痛や食欲不振、全身のしんどさや胆嚢炎もしくは胆管炎を併発し発熱を認めることもあります。
4.検査方法
腹部超音波検査CT検査、あるいはMRI検査も有用です。さらに腫瘍マーカーの測定を行います。これらの検査で胆道癌が疑われた場合には、次の検査として内視鏡を使った検査を行います。内視鏡の検査は逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)と言われ、胆道に造影剤を注入してレントゲンに写す検査や細胞や組織を採取して病理検査を行うことができます。
5.治療方法
胆道がん診療ガイドラインに従って治療しています。胆道がんの治療の原則は手術による癌の切除です。それぞれの部位によって手術の内容が変わるので、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんと十二指腸乳頭部癌、胆嚢がんにわけて説明します。
(1)肝門部領域胆管がん
肝門部という特殊な部位に発生するためにがん細胞が肝外胆管だけではなく肝内胆管に広がることもあります。このため比較的広範囲の肝臓の切除(肝区域切除以上)と肝外胆管の切除が必要で、同時にリンパ節の切除(リンパ節郭清)も行います。
(2)遠位胆管がん、十二指腸乳頭部がん
肝外胆管は膵臓(膵頭部)のなかを貫いて走行しているため、肝外胆管と胆嚢の切除と同時に膵頭部と十二指腸も切除(膵頭十二指腸切除術)します。さらにリンパ節郭清を行います。
(3)胆嚢がん
胆嚢がんはどの程度周囲に広がっているかによって切除する範囲が変わります。早期で胆嚢内の粘膜と言われる部位にのみ限局ている場合には、胆嚢の切除のみを行うこともありますが、通常は胆嚢と肝臓の一部と肝外胆管を切除し、リンパ節郭清を行います。肝臓への広がりが大きければ肝葉切除以上の切除になることもあります。また十二指腸側に広がっていれば肝切除と胆嚢切除と同時に膵頭十二指腸切除術を行うこともあります。
手術が最も治療効果が優れている方法ですが、近年、手術前後に抗癌剤治療を追加する方法も出てきました。当院でも、手術前後の抗癌剤治療や放射線治療を積極的に取り入れ、治癒を目指す治療を行っています。なお、遠隔転移等で手術による切除ができない場合には、抗癌剤治療や放射線治療を行います。
6.減黄処置
胆道がんにおいては、がん発見時に黄疸が存在していることが多いです。黄疸がある状態での手術はリスクが高いため、減黄(黄疸を改善させる処置)を手術等の治療よりも先に行うことが必要です。減黄処置には主に以下の2つの方法があります。
(1)内視鏡を使った減黄処置
内視鏡を使用して、がんにより狭窄や閉塞を起こしている胆道に細いチューブを留置して、胆道内にたまった胆汁を排泄させる方法。
(2)経皮経肝胆道ドレナージ術
がんによる胆道の狭窄や閉塞が起こると肝内胆管が拡張するため、この拡張した肝内胆管を超音波で確認しながら細い針で刺し、この細い針を利用して肝内胆管もしくは肝外胆管内まで(閉塞部位よりは肝臓側)にチューブを 留置し、このチューブからたまった胆汁を排泄させ減黄する方法。
6.治療成績
胆道がん全体での予後はまだ十分ではなく、手術で過不足なく切除できた場合でも5年生存率は30~40%程度です。遠隔転移等で手術できなければ、3年生存はかなり難しい状況です。